第92章

鳴瀬颯真はくるりと背を向けた。二人とも相手を見ようとせず、どちらからも言葉は出ない。

やがて鳴瀬颯真の足元には、吸い殻がいくつも転がった。星川千奈は時計を見て、そろそろお開きだと判断する。

立ち上がって出ようとした、そのとき。

「星川千奈!」

不意に呼び止められ、星川千奈が振り返る。鳴瀬颯真は近づいてきた。さっきまでの刺々しさは引っ込み、顔は妙に静かだ。

「鳴瀬社長……何か?」

星川千奈が小さく問うと、鳴瀬颯真は深い目で彼女を見つめた。眼窩も目尻も、血が滲んだみたいに赤い。

波ひとつ立たない冷淡な瞳を返されて、彼は喉の奥で低く笑う。

「星川千奈。お前、心がないな」

「……え...

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