第93章

「遥真……痛い……」

彼に弄ばれるたび、痛みと息苦しさが押し寄せるのに、身体の奥は抗えないほど熱を増していく。少女は途切れ途切れの息で、言い訳とも懇願ともつかない声を絞り出した。

「ちがう……信じて……! ほんとに、会いたかっただけ……遠くから、顔を見られればそれでよかったの……」

星川千奈は、その瞬間、目の前が真っ白になった。

村上さんと村上奥さんの仲睦まじい姿を何度も見てきた。だからこそ、こんな場面に遭遇してしまった衝撃で、頭が追いつかない。

後ずさった足が金属の巾木を蹴り、「カン」と澄んだ音が廊下に跳ねた。

中の人影が振り向く。千奈ははっとして、反射的にさらに二歩、後ろへ退...

ログインして続きを読む