第94章

「今度もまた、こそこそ入籍する気じゃないだろうな。せめて日取りくらい言えよ。式をやるかどうかは別として、俺らも先にプレゼント用意できるしさ」桐原卓也が言った。

速水誠士郎は頷きかけて――そこで何かを聞き逃したように、信じられない顔で桐原卓也を振り返る。

「……どういう意味だよ。またって、どういうことだよ」

鳴瀬颯真は冷えた表情のまま黙っている。桐原卓也はごくりと唾を飲み、肘で速水誠士郎の脇腹を小突いた。今は黙れ、という合図だ。

颯真の機嫌が悪くなったのは明らかで、桐原卓也は話題を変えて誤魔化そうとした――そのとき。

鳴瀬颯真が伏せていた瞼を持ち上げ、低い声で言った。

「俺と琴音は...

ログインして続きを読む