第97章

星川千奈は眉間に皺を寄せ、目の前の男の弛んだ顔を睨みつけた。――こんなの、彼女が昔知っていた鳴瀬颯真じゃない。

意味が分からない。

全部、こいつが勝手に持ち込んだ厄介ごとだ。

千奈は憤るように鳴瀬颯真を見据え、視線がぶつかった瞬間、差し出されていた手を容赦なく払いのけた。

そして踵を返し、自分のオフィスへ入っていく。

鳴瀬社長の好意も気遣いも、まるで眼中にない――そんな露骨な態度に、フロアの空気が一気に張り詰めた。

当然、重光風子も呆然としていた。

鳴瀬颯真が表情を引っ込め、いつもの冷えた顔に戻って振り返ったとき、風子は思わず一歩、後ずさる。

けれど鳴瀬颯真は、彼女に視線ひと...

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