第112章

星谷由弥子が再び現れ、南由子はどうしても天才が凡人に埋もれるのを見過ごすことができなかった。

川崎冬也が現れるたびに、南由子は彼の耳元で絶え間なく念仏を唱えるようになった。

そんなごたごたの末、彼女は小ホールで待っている上原桃華のことをすっかり忘れてしまった。

「人はどこ?!」上原桃華は長い間待ちくたびれ、突然立ち上がり、顔色は恐ろしいほど暗かった。

「桃華、もう待つのはやめない?南先生は何か用事があるのかもしれないよ」

小ホールで待っていたのは彼女だけではなかったが、上原桃華以外の全員には任務があった。

今年は帝都大学創立100周年であり、この記念すべき年を祝うため、大学は通常...

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