第172章

「夏菜!」

人混みから抜け出したばかりの上原鳥羽が脇に退くと、家のお姫さまの泣き声が聞こえてきた。

上原家の男たちは何もかも優れているが、家の女性陣に何か問題が起きると、たちまち閻魔に変わる。

掌中の珠のように大切にされているお姫さまが今、宴会場で泣きじゃくっている。上原鳥羽はすぐに怒っていた。

怒りながら前に進み出ようとしたが、突然硬直した。

「三郎、夏菜ちゃんが泣いているのか?」

上原家の他のメンバーも物音を聞きつけて次々と集まってきた。

彼らが周りに集まったとき、星谷由弥子の姿を見て、全員が驚きの表情を浮かべた。

「どうして......」

彼らは顔を見合わせ、この世に...

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