第177章

翌日。

星谷由弥子が斉藤國武との通話を終えたばかりのところに、木下浩介から電話がかかってきた。

「若奥様、社長が彼岸天ホテルで酔いつぶれておりまして、お迎えに来ていただけないでしょうか?私は会社に戻って契約書にサインしなければならなくて......」

電話に出るなり、木下浩介の切迫した声が聞こえてきた。

星谷由弥子は今夜契約の調印があることを知っていたが、天宮和人が大酔いするなど聞いたことがなかった。特に契約の場で。

彼女はこの電話の信憑性に少し疑問を感じた。

もう一度電話画面の名前を確認すると、確かに木下浩介だった。

「突然、契約の途中でトラブルが発生しまして、東輔様が千野若...

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