第265章

「川崎先生、その子をお願いします。私はまだ処理すべき件がありますので」

星谷由弥子は川崎冬也の軽口には取り合わず、星野鈴の背中をもう一度前へと押し出した。そして冷ややかな言葉だけを残し、即座に踵を返して立ち去る。

一歩でも遅れることを恐れるかのように。

「え、いや、ちょっと待てよ星谷由弥子! 戻ってこいって! 何があったんだ、ちゃんと説明していけよ? おい、なんだってそんなに走るんだ?」

川崎冬也はわけがわからないといった顔で立ち上がり、星谷由弥子の背中を二、三歩追いかけた。

だが、星谷由弥子は聞く耳を持たず、足早に去っていく。

「ったく……」彼は不可解そうに頭を掻いた。「一体何...

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