第280章

「妹よ、兄は?」

上原夏尾は慌ただしく家へ駆け込んだが、リビングには上原桃華が一人、呆然と立ち尽くしているだけだった。

広いリビングには、上原桃華以外に人影はなかった。

辺りを見回しても上原健介の姿はなく、夏尾は即座に問いかけた。

しばらく待っても返事がない。彼が桃華の方を向くと、彼女は自身の思案に沈みきっており、眉を固く寄せていた。

「おい、どうしたんだ? さっき兄になんて言われた?」

夏尾は桃華のそばに歩み寄ると、その肩に手を置き、心配そうに眉を潜めた。

「もし兄に言われたのが、お前の手に負えないような事なら、俺に任せろ。俺がなんとかしてやる」

桃華が口を開くよりも早く、...

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