第281章

「手を貸して」

 二度目の検査も徒労に終わり、星谷由弥子は眉をひそめて天宮和人の腕を掴んだ。

 天宮和人は無言のまま、素直に手を差し出す。

 星谷由弥子は丁寧に脈を取り、やがて天宮和人の肩に身を乗り出すようにして顔を近づけた。

 二人の距離が一瞬にして縮まる。

 路傍のネオンが投げかける白い光が彼の肩越しにこぼれ落ち、星谷由弥子の頬を優しく包み込んだ。

 その輪郭を柔らかな光が縁取る。天宮和人が視線をわずかに落とせば、彼女の微かに震える睫毛や、右目の下にある極めて薄い泣き黒子までもがはっきりと見て取れた。

 生温かい吐息が夜風に混じり、彼の耳元、頬、そして首筋へと叩きつけられる...

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