第293章

「星谷由弥子!」

 星谷由弥子が身をかわそうとしたその刹那、背後の人物がそれより早く彼女を引き寄せた。

 抗うことのできない強引な力。

 星谷由弥子が振り返ると、白石安広の心配そうな顔が視界いっぱいに飛び込んでくる。

「気をつけろ。奴らの狙いは君だ」

 その言葉に誘導されるように、二人の視線は逃走する人影へと向いた。

 男はこちらを振り返ると、二人の視線に気づき、帽子のつばをぐっと引き下げる。

 そしてそのまま、人混みの中へと姿を消した。

「助かりました、先輩」

 星谷由弥子は体勢を立て直し、白石安広に微笑みかけた。

 しかし白石安広は表情を硬くし、不機嫌さを隠そうともせ...

ログインして続きを読む