第296章

「どうするのよ? 兄さんが林田心優のことを嗅ぎつけたわ。全て任せておけば万全だって、そう言ったじゃない!」

 上原桃華は焦燥に顔を歪め、薄暗い部屋の中を行ったり来たりしながら、うわごとのように呟き続けていた。

 その表情には焦りだけでなく、相手への不信感も滲んでいる。信じるべきではなかったのか――そんな疑念が、彼女の頭をもたげていた。

「上原さん、私のことが信用できませんか?」

 受話器の向こうの相手は、彼女の言葉に含まれた疑いの色を敏感に感じ取ったようだ。

 上原桃華は言葉に詰まり、押し黙る。図星を突かれたのだ。

 相手は鼻で笑うような、嘲りを含んだ声をもらした。

「上原さん...

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