第298章

木下浩介が言葉を切ったその瞬間、ポケットのスマートフォンが短く振動した。

彼は視線を落として画面を確認すると、険しい表情で眉根を寄せる。どうやら何かトラブルが起きたらしい。

「若奥様、少々立て込んでおりまして。こちらへ」

星谷由弥子が頷くと、二人は秘書エリアを離れて一般オフィスを抜け、ガラス張りの個室へと入っていった。

木下浩介は分厚い資料の束を抱えたままで、座ろうともしない。

「星谷邦男の件だけど、そっちに何か新しい情報は入ってない?」

星谷由弥子は単刀直入に切り出した。

木下浩介は一瞬きょとんとしたが、すぐに表情を引き締めた。

「今日、獄中で自殺を図った件でしょうか」

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