第305章

梅園の書斎にて、机の上に置かれたスマートフォンが、ブブッ、と短く二度震えた。

画面に浮かび上がったのは、見慣れた番号だ。

上原健介である。

星谷由弥子の瞳に、すっと冷ややかな光が宿る。

彼女はすぐには応答しなかった。数秒間、画面を見つめてから、ゆっくりと通話ボタンをスワイプする。その声は、極めて平坦だった。

「……はい」

電話の向こうからは、一瞬、何の音もしない。まるで相手が感情を必死に押し殺しているかのようだ。

二秒ほどの沈黙を経て、ようやく上原健介の低く、しかし怒りを孕んだ声が響いた。

「お前、か?」

星谷由弥子は唇の端を軽く吊り上げ、淡々と言い放つ。

「何よ、やっと...

ログインして続きを読む