第309章

病室では、老婦人が再び深い眠りに落ちていた。その表情は穏やかで、寝息も安定している。

星谷由弥子はそっと扉を閉め、廊下の突き当たりにある長椅子に腰を下ろした。その顔には、深い葛藤の色が滲んでいる。

脳裏には、上原健介の言葉が何度もリフレインしていた。『君は僕の妹かもしれない。君は上原家の娘なんだ』

その言葉はまるで楔のように、少しずつ、だが確実に彼女の心に突き刺さっていく。

まさか自分が、あの上原家と関わりを持つことになろうとは夢にも思わなかった。

彼女は決して人を軽々しく信じるタイプではない。だが、真実が知りたかった。

たとえその結果が苦痛を伴うものであったとしても、何も知らず...

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