第327章

Hは知っていた。天宮和人がこれほど大胆に単身で乗り込んできたのは、自分の身分に誰も手出しできないと確信しているからに他ならない。

そういう男は、嫌いじゃない。

天宮和人は室内に視線を走らせる。表面上は冷静を装っているが、内心は焦燥に駆られていた。

星谷由弥子が失踪してから随分と時間が経つ。「無秩序組織」が彼女にそう簡単に手を出さないとは分かっていても、姿が見えない以上、不安は拭えない。

会議室の長テーブルに、黄昏のような薄暗い照明が落ちている。

ライトは上座に座り、その顔色は極めて陰鬱だった。

目の前には分厚い資料の束。そこには天堂島の近年の活動軌跡と、把握している闇ルートの一部...

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