第337章

「星谷さん、これは演習じゃないんだ」

風岡真の声がインカムから響く。その声には、強引に押し殺した苛立ちが滲んでいた。

「あの崖の地質報告書は読んだはずだ。極めて不安定で、風化も深刻だ。高性能ドローンで三度もスキャンさせたが、結論はただの絶壁。人工的な痕跡など皆無だと言っている」

「貴方たちのドローンがスキャンしたのは、あくまで崖の表面でしょう。あの桟道は、その大部分が内側に凹んだ岩の裂け目に嵌め込まれているの。這って進まなければならない箇所さえあるわ。入り口は厚い蔦に覆われた岩洞よ。座標はXXXのXXX。目の前まで行って、その手で蔦を掻き分けぬ限り、絶対に見えやしないわ」

星谷由弥子...

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