第346章

彼女は天宮和人に視線を向け、一片の温もりもない声で告げる。「車を回して。星谷の家へ行くわ」

天宮和人は多くを問わず、短く応じた。「俺も付き合う」

「いいえ」星谷由弥子の拒絶は簡潔だった。「あなたは残って。……兄さんを助けてあげて」

彼女は言葉を区切り、上原健介へと視線を移す。

何の気負いもなく発せられた『兄さん』という響き。だがそれは、上原健介の心を激しく揺さぶり、瞬く間にその目頭を熱くさせた。

「上原桃華と千野美波、二人の足取りを徹底的に洗って。それから……村上明の居場所もね。あいつは、生きたまま連れてきて」

再び言葉を区切る。その声の冷たさは、触れれば凍傷になりそうなほどだ。...

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