第349章

夜の闇が、いっそう深さを増していく。

星谷由弥子はテラスに佇んでいた。夜風が髪を乱すが、彼女の身に纏わりつく寒気までを連れ去ってはくれない。

上原桃華は絵画を売って得た資金を、逃走ではなく、ある謎めいた水産会社への投資に充てていた。遠く離れた郊外で、生け簀を掘っているという。

その行為自体が、どこか死の臭いを漂わせていた。

「その水産会社の正確な位置情報を送って」

星谷由弥子はインカムに向かって低く囁く。

「もうナビに飛ばしたぜ。けどよ、そこマジで偏僻な場所だぞ。鳥も通わねえ、電波も怪しい。一人で行くのは危険すぎるって!」

金髪のハッカーの声には、心配の色が滲んでいる。

「一...

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