第350章

海狼岬。

その三文字が星谷由弥子の脳裏に突き刺さり、深淵に沈殿していた鮮血と混沌の記憶を揺り起こす。骨の髄まで凍てつくような痛みを伴って。

「現場を封鎖せよ!」

若い将校が通信機に向かって怒鳴る。

「全出入り口を固めろ!」

「骨片だ、最優先で確保しろ!」

「鑑識班、DNA鑑定を急げ!」

「上層部に報告、海空戦力の応援を要請する。海狼岬を捜索せよ!」

矢継ぎ早に飛ぶ指令。公安部の特殊部隊が迅速に展開し、廃漁場全体が粛殺とした空気に包まれる。

探照灯が夜の闇を引き裂き、罪深き場所を惨白に照らし出した。

星谷由弥子はその場に立ち尽くしていた。身体の芯から滲み出る寒気と、微かな震...

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