第359章

「海狼岬に行く」

 星谷由弥子のその一言が、リビングの空気を凍りつかせた。

 林田望の顔に張り付いていた万年不変のニヤけた笑みが凍りつく。彼は初めて遊び人の仮面を捨て去り、眉間を深く寄せて声を荒げた。

「正気か? 海狼岬がどういう場所か分かってんのか。あそこは龍の巣だぞ! 一人で死にに行く気かよ」

「一人じゃない」

 星谷由弥子の視線は、天宮和人に注がれる。

 天宮は無事な方の手でソファの肘掛けを掴み、ゆっくりと立ち上がった。

 その動作が傷に響いたのか、顔色はさらに青白くなったが、背筋だけは槍のように鋭く伸びている。

「俺も行く」

 決して大きな声ではない。だが、そこには...

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