第360章

漆黒の闇に包まれた夜。潮の香りが混じる生温かい海風が、海狼岬の切り立った岩肌に叩きつけられ、まるで亡霊の慟哭のような不気味な音を立てていた。

一艘の黒い高速艇がエンジンとライトを落とし、海面を滑るようにして研究所の防御が最も手薄な側面へと忍び寄る。

「金髪、ジャミングの準備は」

星谷由弥子の冷静な声が、骨伝導イヤホンを通じて全員に届く。

「任せとけって、ボス! 俺が本気出しゃ、この辺半径五百メートルは電子信号どころか、ハエ一匹だって迷子になるぜ!」

金髪の声には隠しきれない興奮が滲んでいた。モニターに映し出された海狼岬研究所のセキュリティシステム構成図は、すでに彼の手によって巨大な...

ログインして続きを読む