第362章

彼女はそれだけ言うと、ソファの隅に深く身を沈めた。目を閉じ、身体を小さく丸める。まるで、自分自身とこの世界とを完全に隔絶しようとするかのように。

天宮和人は彼女の前に歩み寄ると、その場にしゃがみ込み、強引に彼女と視線の高さを合わせた。

「弥子、話してくれ。何があったんだ」

星谷由弥子は目を開けなかったが、その身体は微かに、だが確実に強張った。

言えるわけがない。

『案内人』の警告が、今なお耳の底にこびりついている。一言一句が、毒を塗った針のように心臓を突き刺していた。この別荘には今、盗聴器が仕掛けられているかもしれない。余計なことを一言でも口にすれば、夏菜の命に関わる。

「なんで...

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