第374章

天宮家の書斎。

その空気は、まるで鉛のように重く澱んでいた。

天宮和人は暗号化された通話を切ると、軍の最高機密情報との接続を絶った。その重苦しい沈黙が、彼自身の心境を雄弁に物語っていた。

「あいつは自分を囮にして、天堂島という名の鮫を釣り上げる気だ」

和人は巨大な掃き出し窓の前に歩み寄り、漆黒の夜景を見下ろした。

「囮じゃない。あいつは『買い手』として乗り込むつもりだ」

彼の声は異様なほど冷静だった。

電話の相手は、祖父が最も信頼を置く古参の部下だ。

「上原の小僧、気が触れたか」

椅子に深く腰掛けた祖父の手の中で、二つの胡桃が不気味な音を立てて回転している。湯水のごとく金を...

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