第382章

『建築家』のオフィスには、孤独なフロアスタンドの明かりだけが残されていた。その光は、彼が机を叩く指先の影を、高価なペルシャ絨毯の上に長く、揺らめくように引き延ばしている。

「星谷を呼んでこい」

だだっ広い部屋に響く彼の声は、どこか現実味を欠いて漂っていた。

数分後、星谷由弥子が重厚な無垢材のドアを押し開け、中へと入ってきた。その顔には相変わらずつけ入る隙のない冷静さが張り付いている。足音は柔らかな絨毯に完全に吸い込まれ、まるで深夜に訪れる幽霊のように静かだった。

「星谷さん、掛けたまえ」

『建築家』は手振りで、向かいにあるアームチェアを示した。

星谷由弥子は言われるがままに腰を下...

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