第390章

天宮本家の重厚なレリーフが施された鉄扉が、深夜の闇を切り裂くように音もなく開いた。

煌々と明かりが灯る中、天宮家の老当主が上着を羽織り、階段の上に佇んでいる。夜風がその身を寂しげに打つが、その背筋は剣のように真っ直ぐだった。車から降り立つ星谷由弥子の姿、そして彼女の懐にしがみつく、まるで捨て猫のように痩せ細った少女――夏菜の姿を認めた瞬間、一晩中張り詰めていた老人の表情が、音を立てて崩れ落ちた。

「帰ってきてくれれば、それでいい。無事でよかった……」

階段を降りるその声には、抑えきれない枯れた響きがあった。

リビングでは、天宮家の奥さんがソファに鎮座していた。目の前のボーンチャイナの...

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