第462章

車内を支配するのは、タイヤがアスファルトを噛む微かな走行音だけだった。

天宮和人のスマートフォンの画面。そこに映し出された一輪の白い蘭が、不吉な燐光を放っている。

それは警告であり、宣戦布告でもあった。

送り主は、天宮彰佑。

星谷由弥子は写真から視線を外し、和人の強張った横顔を見つめた。何も聞かず、スマホを握りしめる彼の手の甲に、そっと自分の手を重ねる。その温かく柔らかな感触が、凍てつきかけた彼の瞳に、ほんの万分の一ほどの熱を取り戻させた。

「家へ」

天宮和人はスマホをしまうと、短く運転手に告げた。

彼は激昂したわけでも、恐怖したわけでもない。ただ、その白い蘭は、煮えたぎる油に...

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