第470章

天宮グループ最上階、社長執務室。

空気は澱み、極限まで圧縮された鉄塊のように重苦しい。

風岡はデスクの前に直立し、報告する声には微かな渇きが混じっていた。

「天宮社長。例の『園守者』とかいう謎の収集家ですが、正体を突き止めました。二十年以上前に名を馳せた生物遺伝学者、星谷世夫です」

天宮和人が視線を上げる。その黒眸には何の感情も浮かんでいないが、風岡の背筋を凍らせるには十分だった。

星谷世夫。

記憶にある名前だ。『月の美人』を生み出した蘭科植物の専門家。星谷由弥子の親戚であり、彼女の両親が仕事で多忙だった頃、頻繁に面倒を見ていた人物。いわば、彼女の幼少期において最も親しい家族のよ...

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