第472章

周囲の客たちがその花の形に気づき、小さな驚嘆の声を上げた。

「あれは『月の美人』じゃないか? 伝説の星谷世夫さんが作り出した絶品の蘭だろ。とっくに絶滅したはずじゃ……。あんな巨大な水晶で復刻させるなんて、とんでもない大盤振る舞いだ」

「桐原先生は教え子に対して本当に手厚いな。うちの娘にもあんな先生がいてくれたらいいのに」

さざめく議論の中、照明の下でクリスタルは璀璨たる輝きを放つ。その蘭の造形は、花弁の一枚一枚に至るまで精緻を極め、それゆえに冷徹な悪意を透かしていた。

夏菜は小さな手でその箱を捧げ持ち、キラキラと光る贈り物に興味を示したものの、無意識のうちに不安げに母を見上げた。

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