第488章

 マイバッハが「晴天ドーム」を背に走り出す。背後には、あの惨劇と喧騒だけが完全に取り残された。

 星谷由弥子は掌を開いた。上原夫人のハイヒールの底から採取した、血に濡れたキャンバス地の欠片。それが静かに掌紋の上に横たわっている。

 黒糸で刺繍された蠍。その尾針に施された小さな髑髏が、不気味な邪気を放っていた。

「口封じのつもりね」

 星谷由弥子の声に、温度はない。

「俺の庭で事を起こして、しかも五体満足でずらかった。ただの殺し屋組織じゃない」

 天宮和人は片手でステアリングを操りながら、もう一方の手ですでに暗号化回線をつないでいた。

 即座に大ニコの声が飛び込んでくる。いつもの...

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