第494章

彼は画像を拡大した。

写真に映し出されているのは、死者の弛緩したうなじだ。そこには極小の紅い点があった。法医学者の初期検視報告書にすら記載されないほど、微細な痕跡。

マウスホイールが回されるたび、ピクセルが分裂と再構築を繰り返す。やがて、その紅い点は具体的な図像へと結実した。

一匹の、黒い蠍。尾の先端にある毒針は、表情を歪めた小さな髑髏を象っていた。

天宮和人の指先は、画面上の「黒蠍」の紋章の上で、長いこと止まっていた。

照明の落ちた書斎。モニターの光だけが彼の顔を照らし、明と暗のコントラストを刻んでいる。

「畏罪自殺、か」

ようやく開かれた口調に、温度は感じられない。

「息...

ログインして続きを読む