第75章

上原健介は淡々と応じた。「大したことではありませんよ、天宮社長。大げさに仰らないでください」

二人は表面上は穏やかに言葉を交わしていたが、その裏には他人には見えない激しい対立があった。

この二人については、かねてより「絶世の双璧」という美名で呼ばれていた。

二人とも業界では名高い若き当主であり、若年ながらもそれぞれの分野で頭角を現していた。

ここ二年ほど、二人は揃ってそれぞれの領域を超えた事業拡大に乗り出し、世間を賑わせていた。果たして上原健介と、天宮和人、どちらがより優れているのか。

しかし二人が同じ場に姿を現すことは稀で、今日このミシュランレストランでの出会いは、正式な会話とし...

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