第87章

天宮和人は拓海に人混みの中へと引っ張られていた。拓海は宝物を見せるかのように手にしたおもちゃを天宮和人に差し出した。「これはママがくれた機関車だよ。小さな車輪がなくても動くんだ」

「それからこれも。僕の思考力を鍛えられるんだって……」

拓海は一流のセールスマンのように、星谷由弥子の言葉を一字一句そのまま天宮和人に伝えていた。

それを見ていた天宮お爺さんと天宮大奥様は終始にこやかに微笑んでいた。

「もういいわよ。そんな高価なものじゃないんだから。早くお父さんを座らせてあげなさい。今日は出張から帰ってきたばかりで疲れているのよ」天宮大奥様は曾孫を引き寄せ、天宮拓海を抱き上げた。

「ひい...

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