第89章

夜になった。

星谷由弥子はその書類の存在に気づいた。

「これは何?」

「星谷邦男が持ってきたものだ。中身は見ていない。ゆっくり読んでみるといい」

天宮和人はちらりと一瞥しただけで、すぐに手元の書類に戻った。

星谷由弥子は好奇心から手に取り、表紙に「株式」という文字を見て、星谷邦男がまた何か企んでいるのではないかと思わず中を確認したくなった。

書類を閉じた瞬間、星谷由弥子は呆れて笑ってしまった。

彼女は絶対におかしい。こんな意味不明な書類を真面目に読むなんて。

表向きは株式譲渡の書類だが、実際には星谷由弥子を会社の法定代表者の地位に据えようとするものだった。

「おめでとう、星...

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