第90章

月明かりに星がまばらに輝いていた。

道沿いの灯りがすべて灯り、夜が昼のように明るくなっていた。

星谷邦男は車の中に身を潜め、しばらくしてから低く笑い声を漏らした。「まさか自分の血筋に賢い奴がいるとはな」

上原桃華が言った言葉を思い返し、彼は突然期待感を抱き始めた。

天宮家本家。

星谷由弥子はバルコニーに立ち、腕を組んで、黙ったまま空の澄んだ月を見上げていた。

「ママ、何見てるの?」

お風呂から上がった天宮拓海はドジョウのように、使用人をすり抜け、小走りで主寝室まで駆け込んでいた。

ソファでまだ書類を見ている天宮和人を避けて、バルコニーに立つ星谷由弥子の元へと直行した。

星谷...

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