第104章

日向雫の言葉が落ちた瞬間、部屋の空気は凍りついた。残されたのは、時計の針が時を刻むかすかな音だけ。

鷹司蓮矢は黙り込む。

喉仏が二度、上下した。ようやく彼は、重たく口を開く。

「雨宮静佳の面倒を見るのは、俺が彼女に負っている責任だからだ。償うべきことでもある。だが安心しろ。ちゃんと一線は守る」

「一線?」

日向雫は肩をわずかにすくめ、ふっと乾いた笑いを漏らした。顔を背け、小指で乱れた髪を耳へ払う。窓に映った自分の目は、もう赤くにじんでいた。

「鷹司蓮矢。あなたの言う一線って何? 雨宮静佳と不倫して、子供までつくること? それとも、私たちの結婚記念日に一人でトイレにこもって、雨宮静...

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