第110章

日向雫が新田朱音に電話をかけようとした、その瞬間だった。スマホがぶるりと震え、画面に浮かび上がったのは坂本時佐の名。

指先がわずかに止まり、彼女はそのまま通話ボタンをスライドした。

「もしもし、先輩」

「日向雫……大丈夫か?」

坂本時佐の声には疲れが滲んでいて、そこにほんのわずかな――言い訳にも似た申し訳なさが混じっていた。

「ここ数日、美波のそばにいるんです。帰国したばかりで、こっちの生活にまだ慣れなくて……精神的にも不安定で。今はちょっと離れられなくて」

「檜山社長の件、俺……結局、何もできなかった。申し訳ない」

「先輩、そんなふうに言わないでください」

日向雫は穏やかに...

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