第111章

日向雫は眉をつり上げた。

「へえ。そりゃまた、都合よく偶然ね」

鷹司蓮矢の顔色が冴えないのが、はっきり分かる。

雨宮静佳の件で苛立っているのだろう。公開謝罪の取り下げを迫りに来たに違いない――そう思うと、胸の奥のざらつきが増した。

「雨宮静佳のことで言いに来たなら、無駄よ。謝るのはあの子の責任。交渉の余地はないわ」

言い捨てて、踵を返す。

「日向雫」

鷹司蓮矢が手を伸ばし、彼女の手首を掴んだ。

「違う。雨宮静佳のことじゃない」

日向雫は振りほどき、氷みたいな声で返す。

「……じゃあ鷹司社長、まだ何か? 友達が待ってるの」

突き放すような態度に、鷹司蓮矢の胸がちくりと痛ん...

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