第135章

日向雫は小さくうなずき、それ以上は追及しなかった。

「もう暗い。送っていく」

鷹司蓮矢はファイルを閉じ、淡々と言った。

「大丈夫です、鷹司社長。すぐそこですし、ひとりで帰れます」

「駄目だ」

鷹司蓮矢の声は有無を言わせない硬さを帯びる。

「夜道は危ない。必ず送る」

日向雫がなおも断ろうとしたときには、彼はもう先に歩き出していた。

「行くぞ。時間を無駄にするな」

夜が深まり、街灯の柔らかな光が二人の影を長く引き伸ばす。

ほんの数分の距離のはずなのに、なぜかやたらと遠い。どちらも口を開かず、気まずい沈黙だけがついてくる。

日向雫は時折、横目で鷹司蓮矢を見た。

やがて別荘の...

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