第141章

「日向雫」

鷹司蓮矢の声は低く沈んでいた。

「……ありがとう」

日向雫は頬がじわりと熱くなるのを感じ、彼の視線を避けて湖面へ目を落とす。

「お礼なんていらない。私も、おじい様のためにやっただけ」

二人は湖畔でしばらく黙って過ごし、空が完全に闇へ沈んでから並んでその場を離れた。

鷹司蓮矢が彼女を送ろうとした、そのとき。

ポケットのスマホが震え、着信音が夜気を切った。

母親からだ。

「もしもし、母さん」

鷹司蓮矢が出ると、向こうの声はどこか焦っている。

『蓮矢、今どこにいるの?』

「今、帰るところだ」

『そっちに戻らないで。すぐ旧宅に帰ってきなさい』

母親は言い切るよ...

ログインして続きを読む