第161章

冷たい空気が辺りを包み、みっともなく床に膝をついた渡辺夏央を容赦なく追い詰める。

肘で冷えた床を支えたまま、周囲にはこぼれた酒が散らばっていた。湿ってべたつく感触が肌にまとわりつき、息をするたび不快さが増していく。

それでも夏央は奥歯を噛みしめ、ひと言たりとも吐かなかった。

鷹司蓮矢はソファに深く腰を下ろしたまま、微動だにしない。漆黒の瞳には、温度というものが最初から存在しないかのようだった。

「渡辺夏央」

ゆっくりと口を開く。声は高くない。だが、逃げ道を塞ぐには十分だった。

「俺が今日ここに座ってるのは、お前の命乞いを聞くためじゃない。誰かをかばう言い訳を眺めるためでもない」

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