第178章

「日向雫!」鷹司蓮矢は立ち上がるなり、追いかけようとした。

雨宮静佳が慌ててその手を掴む。声には露骨な心配が滲む。

「蓮矢、さっき私を庇って……どこか怪我してない?」

鷹司蓮矢は雨宮静佳の手を乱暴に振りほどき、応接フロアへ向かって駆け出した。

「蓮矢!」

長い廊下に雨宮静佳の声が突き刺さる。だが鷹司蓮矢は振り返りもしない。

雨宮静佳は全身を震わせ、掌をぎゅっと握り潰す。

「……あの人、子どもを私に渡さない……」

視線が落ち着かず、恐怖が蔓のように身体へ絡みつく。息をする酸素を、じわじわ奪っていく。

子どもを手に入れられなければ、鷹司嘉治に顔向けできない。

それに、子どもが...

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