第215章

その言葉は、ちょうど坂本時佐の懸念を突いた。

彼は診察室のドアに目をやり、まだ中が静かなのを確かめる。終わるまで少なくとも二十分はかかりそうだった。

坂本美波のほうは緊急事態だ。ぐずぐずしていられない。

数秒迷った末、彼はとうとう歯を食いしばった。

「分かった。悪いけど、彼女に一言伝えといて。俺、先に行く」

坂本時佐はそれだけ早口に言い残すと、上着を掴んでエレベーターへ駆けた。足取りは切羽詰まっていて、振り返りもしない。

角を曲がって消えていく背中を見送りながら、執事の顔から笑みがゆっくり消えた。

顎に手を当てる。目の奥に、腑に落ちた色が差す。

さっきまであれほど庇っていたく...

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