第216章

日向雫はスマホを握ったまま、しばらくぼんやりしていた。

「このタイミングで、会うのはやめたほうがいいよね」

こめかみの痛むあたりを指で押さえ、そっと揉む。もう臨月だ。ここで坂本美波と鉢合わせでもしたら、何が起きるか分からない。

坂本家には散々よくしてもらった。恩を仇で返して、あの人たちを板挟みにするなんて――そんなこと、できるはずがない。

日向雫は小さく息を吐いた。

その気配を聞き取ったのか、神田弥央の声が途端に強張る。

「……もう来てるの? 雫、困ってるんじゃない?」

「うん……先輩が今日、検診に付き添ってくれたんだけど、途中で急に抜けて。さっきも『急用ができた』ってメッセー...

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