第218章

日向雫は坂本家には戻らなかった。

坂本美波と鉢合わせでもしたら、間違いなく大騒ぎになる。そんな予感があったからだ。

けれど、A国に来てまだ日が浅い。学校の周辺にも詳しくないうえ、出産予定日も近い。住まいだけは適当に決めるわけにはいかなかった。

そこで雫はジェニーに電話をかけた。

「ジェニー、急で悪いんだけど……部屋を探さなきゃいけなくなって。できれば今日中に入れるところ。今、時間ある? 一緒に来てほしいの」

「ご飯、おごるから」

受話器の向こうで、ジェニーが一瞬言葉を失った。

「え? 雫、前から住むところあったよね?」

「……」

説明しづらい。まさか、坂本時佐の家に住んでい...

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