第32章

「……施しなんて、いらない」

日向雫が遮る。声は氷を打ち鳴らしたみたいに冷たく、しんとした庭に落ちて砕けた。

「鷹司蓮矢。あんたを助けたのは、私が好きでやったこと」

顔を上げる。月明かりが瞳の奥に差し、澄んだ冷えを映している。

「この両手と引き換えに、あんたの命が助かった。後悔なんて一度もない。あれは……私の、若さゆえのときめきだったから。馬鹿みたいな好きに、私自身が代償を払っただけ」

雫は小さく震える息を飲んだ。

「でも、もう十分。これ以上は無理」

「私に負い目を感じなくていい。自分の人生まで差し出して償う必要もない。……ここで終わりにしよう。お互いのため」

そよ風が髪を撫...

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