第61章

鷹司蓮矢はスマホを指先で挟み、薄い唇をわずかに開いた。

「上田直樹がお前の近くにいる。そっちへ行かせるから、病院まで送ってもらえ」

「やだ……」

受話口の向こうから、雨宮静佳の泣き混じりの声がすぐに返ってくる。か細く、弱々しく、いかにも縋るような響きだった。

「蓮矢、こんなことお願いするなんてわがままだって分かってる。でも……でも、本当に怖いの……」

すすり泣きが少しずつ大きくなる。わざとらしいほど震えを含んだ声。

「もし……もし私に何かあったらどうするの? 一度でいいから、来てくれない? ほんの少し顔を見せてくれるだけでも……」

雨宮静佳は受話器に向かって息も絶え絶えに泣き崩...

ログインして続きを読む