第62章

夕方七時半。鷹司蓮矢の車は、路面の継ぎ目すら感じさせないほど滑らかに走っていた。

橘に染まった夕焼けが窓越しに差し込み、冷えた横顔へまだらな光を落とす。視線の奥には、苛立ちとも焦燥ともつかない濁りが濃く滲んでいた。

信号が赤に変わる。ブレーキを踏んだ瞬間、脳裏に――さっきの、日向雫のあの嘲るような表情が、勝手に浮かび上がる。

……どうして、そこまでの態度を取る。

青。スマホが短く鳴った。

雫からだと思い、蓮矢は交差点を抜けて脇に寄せる。画面を見て、眉がわずかに寄った。上田直樹からだ。

【雨宮さんの検査は正常、情緒も安定しています。ただ、ずっと『鷹司さんに会いたい』と言っていま...

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