第64章

一瞬にして、あたりは静まり返った。

VIP個室のエアコンはちょうどいい温度に調えられている。それなのに日向雫の背中には、じっとりと冷や汗が滲んだ。

「これは、私の問題です」

雫は鷹司蓮矢の手を振りほどき、もがくようにベッドから降りようとする。

鷹司蓮矢は、奥歯が軋むほど苛立っていた。

雫の足首が床に触れた瞬間、肩を押さえつけられ、ベッドボードへ押し戻される。

「座れ!」

鷹司蓮矢の瞳の奥で、怒りと理解できない苛立ちが渦を巻く。

「怪我してるだろ。安静にしてろ。身分証がないなら探せばいい、再発行もできる。何をそんなに焦る?」

「待てないの!」

「なんで待てない」

蓮矢は一...

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