第66章

電話を切るなり、鷹司蓮矢はスマホを調理台の上へ乱暴に放り投げた。

くるりと踵を返し、コンロへ目をやる。鍋の中の生姜湯は、とっくにぐつぐつと煮立っていて、搾り汁はとろりと艶を帯びていた。

火を止め、戸棚から日向雫がいちばん気に入っている白磁の器を取り出す。

その手つきは、知らず知らずのうちにやわらいでいた。慎重に生姜湯をよそい入れる。立ちのぼる湯気が冷えきった横顔を撫で、張りつめていた剣呑さをわずかに薄めた。

器を手に、二階へ上がる。

主寝室の扉を開けた瞬間、浴室の中の物音がぴたりと止んだ。

やがて、日向雫がグレーのスウェット姿で出てくる。

「風呂、終わったか」

鷹司蓮矢は白磁...

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